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読書記録と好きな本の紹介。

アイスクリームとかき氷のお話

      2015/08/29

つめたいものが貴重品だった時代のアイスクリームの本を読むと、贅沢の極みといった風情でほんとうにおいしそう。今のものより美味しいんじゃないか思うほどです。
暑い夏の日に、アイスクリームやかき氷がますます美味しくなる本です。

『王さまのアイスクリーム』のバニラ・アイス・クリーム

そこで 王さまは、さむい ときには あたたかいクリームを、あつい ときには つめたい クリームを、まいにち、三じの おやつに めしあがることに なっていました。

アイスクリームの作り方を、読んでるうちに覚えてしまう絵本です。
きむずかしい王さまのおやつは、一週間まいにち違うシロップをかけたクリーム。
暑い夏の日には冷たくしてお出ししなければいけないのに、井戸水ではなかなかクリームが冷えません。そこに山から氷を売りに来た少年がとおりかかります。コックとその娘たちが協力して、クリームをミルクの缶に入れて、氷でうんと冷たくすると、王さまは大喜び。
しかしある日、大いそぎで冷やしたクリームから、偶然にアイスクリームができるのです。
はじめて食べる、凍るほど冷たくて、甘くて、バニラの香りがするアイスクリームを考えるとうっとりします。

『枕草子』の削りごおり

あてなるもの
薄色に白がさねの汗衫。かりのこ。削り氷にあまづら入れて、新しき金鋺に入れたる。水晶の数珠。藤の花。梅(の)花に雪の降りかゝりたる。いみじううつくしきちごの、いちごなど食ひたる。

かき氷といえばこれ。枕草子のあてなるもの(上品なもの)の段にある、削り氷(かき氷)。
冷たいものが貴重なのは昔の日本も同じ。平安時代、夏の氷室の氷は特権階級だけの贅沢品でした。
あてなるものの段には水晶・藤・梅に雪…と、文句なしに清らかな取り合わせの中にかき氷が並んでいます。金鋺(かなまり)は金属製のおわんのことで、講談社学術文庫の解説には「氷との配色から見ても銀製であろう」と書かれています。
氷室の氷を細かく削り、甘葛のシロップをかけ、新しい金属製のお椀に盛った削り氷の様はなんとも涼しげできらきらと美しい様子に思えます。

『赤毛のアン』のピクニックのアイスクリーム

アイスクリームって言語を絶したものだわ、マリラ。まったく崇高なものね。

赤毛のアンの時代(1880年頃)、アイスクリームはなかなか普段口に入ることのない贅沢なおやつです。第13章「待ちこがれるピクニック」14章「アンの告白」にわたって初めての日曜学校のピクニックと、そこで出されるというまだ食べたことのないアイスクリームへのアンの期待ぶりが綴られています。
ところがピクニックを目前にして、マリラの紫水晶のブローチをなくした疑いをかけられ部屋に閉じ込められたアン。どうにかしてピクニックに行かせてもらおうと、必死でマリラに告白をするのですが…。

『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』のコルドン・ブルーのアイスクリーム

とくにアイスクリームに至っては、絶対につくることはないと言い切れる。一番高級なおいしいアイスクリームの作り方は、実際すごい労力のいる仕事なのだ。

シャンソン歌手石井好子さんが書いた、お料理エッセイの元祖というべき本です。
昭和38年(1963年)発行ですが、気取りのない文章で全然古くさくありません。
アイスクリームのエピソードはパリの有名お料理学校コルドン・ブルーに三週間通った体験談の中にあります。氷と塩を入れた中にアイスクリームの筒を入れ、手回し式の機械をガラガラと回して冷やしつづける昔ながらの工程は一苦労。それでいて、できたアイスクリームは「シャンデリアの輝く広間の正式ディナーにふさわしい」。いかにも高級品といった風格の手間暇かかったアイスクリーム、一度食べてみたい。

『ドラえもん』の大きなアイスクリーム

「半分こすると少ないね。」
「そうだ、ぼうしをかぶろう。」

子供の夢そのもののような、お腹いっぱい食べられるアイスクリームが出てくるのが、かぶると小さくなれる麦わら帽子型のひみつ道具、「いっすんぼうし」のお話。
ドラえもんとのび太で半分こしたアイスクリームを、いっすんぼうしをかぶって自分達が小さくなって食べようという最後のコマのアイスクリーム。お皿に乗ってたべる、山のような大きさのすこし溶けかけているようなアイスクリームの絵がものすごくおいしそう。
てんとう虫コミックスの16巻15話。

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